今回は以前、胚の凍結についてのお話をさせて頂いたので胚の融解についてのお話です。
凍結胚の融解は当院では移植当日の朝に行っています。または、発生が遅れている胚の場合はその遅れを取り戻すために予め前日に行います。
凍結された胚を融解する場合、−20〜−80℃の間の温度で氷の結晶が出来やすくなります。そのため、凍結胚の融解を行う時はさらに急速な加温が必要になります。そこで、当院で行っている方法では37℃に温めた融解液で加温することにで、+4,3000℃/分の急速な加温を可能にし、胚の物理的損傷を防いでいます。
また、融解後の胚は内部に凍結の時に使用した凍結保護物質が残っているためそれを取り除かなければなりません。その際、浸透圧の濃度の低い方から濃度の高い方へ保護物質が移動する現象を利用して取り除きます。しかし胚を取り囲んでいる細胞膜は急激な体積の変化に弱く急に浸透圧が変化すると構造を維持できなくなります。そこで、段階的に希釈した希釈液を利用して少しずつ取り除き、細胞の急激な体積変化を抑えながら希釈、除去を行い細胞膜の損傷を防いでいます。
以上のような行程を経て凍結されていた胚はついに移植を迎えることができます。